現象 − クロヌマ タカトシ展

奈義町現代美術館
salon"the Room" | MÜTTE 3rd Floor

2025年1月25日(土)〜2025年3月9日(日)

 

「現象」とは、空間と時間のなかで永遠に移ろい続ける「私」という存在である。クロヌマタカトシの彫刻は、人間の孤独を肯定し、「生と死」「光と闇」「私と現実」といった分割された二つのものの境界に立ち、「私」という存在を認識するための像でもある。彫刻を見ていると作り手の意図や自己の見方から解放されて、やがて私が見ているのか、彫刻に私が見られているのかも忘れてしまう。その移ろい続ける「私」という存在から人間や自然、社会の存在とは何かと問いかけている。
 クロヌマタカトシは学校を卒業後、建築会社に就職する。毎日が同じような図面の中で進む仕事に強烈な違和感を覚え、勤める建築現場に落ちていた端材を持ち帰り、自室で自ら木を彫る衝動に駆られたのが23歳のときだった。その後2010年に木彫作家として生きていくことを決断し、独学で試行錯誤を繰り返し2011年に初めて個展を開催する。当初は実用性のあるカトラリーなどを中心に製作していたが、徐々に動物や人物など手がけるようになり彫刻家としての意識が芽生えていく。現在は三つの作品構成があり一つ目は、樟の塊から削り出して製作する人物や動物、建物などの作品。二つ目は、流木の持つ強さ、表情、経年を読み取り、そこに映し出していく動物作品。三つ目は、今現在に感じた自己を形にする粘土の作品。いずれの作品も今にも動きそうなほど忠実な表情や骨格でありながら見るものにどこか余白を与える。その余白は、やがて自己の存在の気づきとなり、他者の存在を意識させる。存在の根源的な哀しさに形を与え、美しさとして現すことがクロヌマタカトシの作品である。本展では、作家初の美術館という公共性の高い場所での展覧会である。クロヌマタカトシの「像」は、私たちの前にどのような「現象」を現すだろうか。それぞれの見方で掬い取られた「現象」が、展覧会を起点としてどのように変わっていくかも本展の一つの意義であり、作家本人も望んでいることであるように思う。

現象31

一角獣


奈義町現代美術館ギャラリー
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
入館料:一般・大学生200円(高校生以下、75歳以上無料)
※常設展と一緒にお求めの場合は通常入館料700円でご覧いただけます。

休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は開館)、
および祝日の翌日(祝日の翌日が土・日曜日の場合は開館)
※2月24日(月・振替休日)は開館 / 2月12日(水)、2月25日(火)は休館

奈義町現代美術館
〒708-1323 岡山県勝田郡奈義町豊沢441 
TEL:0868-36-5811 
FAX:0868-36-5855 
MAIL:nagimoca@town.nagi.lg.jp


salon"the Room" | MÜTTE 3rd Floor
12:00~19:00 月・火・水休み
〒700-0816 岡山県岡山市北区富田町2-2-7

Previous
Previous

「現象」 名古屋 巡回展

Next
Next

白へ