現象
phenomenon
空間と時間のなかで永遠に移ろい続ける私という現象。
それを形あるものに現すことが私にとっての現実であり彫刻だろう。
しかしそれは川を掬うようなことだ。
川の水を両手で掬いあげても川そのものは掬うことができないように
私という流れ続けるものを形に留めようとすることは矛盾に満ちている。
ではなぜ私はそれを試みるのだろうか。
それは分からないものを分からないままに理解したいからである。
生命を分割せずに理解したい。
人間を迷いのままに理解したい。
存在と時間の関係をありのままに現したい。
私と現実のあいだの永遠のあわいを捉えたい。
そのような兆しが訪れるとき私は彫刻へ向かうのだが
いつも決まって私は彫刻に裏切られ続ける。
そしてまた兆しに立とうと彫刻へ向かう。
その連続の中で何かが現れ象られるのを私は私と共に待っている。